2008年10月10日号
創立150年記念事業 解説
21世紀先導する学塾へ

基本コンセプト
創立百五十年記念事業は、二〇〇五年十月にスタートし、今後十年間にわたって推進される大事業。そのコンセプトとして掲げられるのが、「未来への先導」と「独立と協生」である。
「独立」とは、国家や民族、宗教、文化、経済などが多様に影響し合う多極化社会の中でも自分で考え行動する、“独立して生きる力”を表す。一方の「協生」とは、他者と協力することで国際社会や地域、世代などに絡む利害得失や軋轢を超えていこうとする、“協力して生きる力”を表す。そして、「未来への先導」は、この二つを兼ね備えた人材を輩出し、新しい社会の形成に貢献するという、未来の先導役としての義塾の使命を表している。
しかし、この記念事業はそれだけで存在するものではなく、二〇〇一年九月に制定された「慶應義塾二十一世紀グランドデザイン」にその方針を置いている。このグランドデザインは、二十一世紀社会を先導していく慶應義塾の長期的ビジョンを示したもの。
その実現に向けた具体的方策として、慶應義塾は二〇〇二年七月に「総合改革プラン二〇〇二~二〇〇六」を制定した。そこでは、教育先導、学術先導、新実業先導、知識・スキル先導、知的社会基盤先導、キャンパス環境先導という六つの先導項目を挙げている。
創立百五十年記念事業は、この六つの長期的ビジョンを果たすための十年にわたる中期的ビジョンであり、二十一世紀を先導する学塾になるための取組みなのである。具体的に、次の六つの分野で取組みを進めている。
未来先導基金
慶應義塾は、創立百五十年記念事業の一環として、二〇〇六年二月、「慶應義塾創立百五十年記念未来先導基金」を創設。同基金は、創立百五十年記念事業募金による寄付金の一部を原資とし、未来への先導役となる人間の育成を目的として使われる。
事業としては、塾生の国際体験を推進する留学・研修およびインターシップ、留学生の受け入れおよび支援ならびに国際交流促進 、国際的水準の実績を有する先導者の招聘による独創的講座 、大学学部・大学院等におけるチェアシップ講座および一貫教育校における特色ある教育プログラム、などを実施している。
留学生の受け入れ・支援では、「未来先導国際奨学金」を設置。特別に優秀な留学生に対して、生活費、渡航費、学費全額を支給する制度で、最高額は二年間で九百万円。これは政府が行っている国費外国人留学生の待遇を上回り、国内では最高水準となる。
新大学院の開設
二〇〇八年四月、これまで日本にはなかったタイプの二つの大学院研究科が誕生。システムデザイン・マネジメント研究科は、新しい技術・社会システムをデザインできるシステムデザイナー、確実な開発を担うプロジェクトマネージャーを育成する。
メディアデザイン研究科は、デジタルメディア分野における創造リーダー“メディア・イノベータ”を育成。デザイン、テクノロジー、マネジメント、ポリシーの各領域を各人が統合し、先端的研究プロジェクトを行う。
さらに、来年二〇〇九年四月には、大学院経営管理研究科が新カリキュラムを導入予定。日本初のビジネススクールであるKBS(慶應ビジネス・スクール)をリニューアルし、「経営基礎能力」に加えた「変革資質」を養うためのカリキュラムを展開、変革リーダーを育てる。
さらには、言語・文化の統合的視野を持つリーダー育成のための大学院統合言語・文化研究科(構想中)の設置も検討している。
一貫教育校
記念事業の一つとして、慶應義塾は新たな小中一貫校の新設を計画。二〇〇七年四月に横浜市から発表された「青葉区学校予定地活用事業者公募」に申請し、同年十一月に事業予定者として採用された。横浜市青葉区内の総面積四万九千五百七平方メートルにおよぶ土地に、二〇一一年四月に開設する。日本と世界を先導できる人材の育成に向け、国際教育、体験教育などを通して、グローバルなコミュニケーション能力を培っていく。
国際連携
慶應義塾では、真の意味でのグローバル化教育を実現するための戦略的な国際連携を推進中。現在、二百二十以上の大学・機関との間に交流協定を締結し、海外からの留学生受け入れ数も、前年と比べて六十四人増の九百三十四人と年々増加を続けている。総学生数に占める留学生数の割合は二・五%で、東大の七・九%、早稲田の四%に比べるとまだ低い水準にあり、キャンパス内の国際化が今後さらに進む見通しだ。
また、海外拠点を従来の欧米に加え、二〇〇六年にソウルとロンドンに、二〇〇七年には北京に開設し、世界十一カ所に拡大。さらに、これら海外拠点では、学部・研究科・研究所などの国際展開を支援しつつ、優秀な留学生獲得のための諸活動も展開している。
特に、環太平洋地域を代表する十六カ国三十七大学が加盟するAPRU(環太平洋大学協会)との連携を強化。二〇〇七年にAPRU博士課程学生会議を日本で初めて開催、今年六月には、各加盟大学の学長が一堂に会するAPRU学長会議を日本初のホスト校として開催した。
福澤諭吉記念文明塾
福澤精神を実践するプロジェクト「福澤諭吉記念文明塾」が、今年四月から先行プログラムを開始、二〇〇九年春の本格開講を目指す。先導的テーマの研究拠点と、独立自尊の精神を備えた先導者を育成する発育教育の拠点としての二つの側面を併せ持つ。特に教育拠点としては、国際的なリーダー育成のため、国際化を意識したテーマを扱う講座を開設、「半学半教」の精神に基づき国内外で活躍する塾員を講師として招聘。先輩・後輩の別なく自由闊達に意見を述べ合う場を創出していく。

新拠点の建設
三田キャンパスでは、南校舎が生まれ変わり、未来先導館(仮称)を含む新校舎が二〇一一年に竣工予定。また、南校舎建て替えに伴い、正門向かい側に南別館(仮称)を建設。代替教室利用終了後も、ほかの用途に転用できる本設の建物となる。さらに、西校舎の建て替えも検討中。
日吉キャンパスは、今年八月に竣工した協生館をはじめ、十月には陸上競技場の整備が完了。また、第四校舎綱島街道側に新教育棟が現在建設中で、二〇〇九年三月に竣工する。さらに、日吉記念館が二〇一〇年秋には収容人員一万人規模で生まれ変わる予定。さまざまな式典やイベント施設として、アリーナ面積の拡大による充実した体育施設として活用される。
ほかにも、矢上キャンパスではテクノロジーセンター(仮称)の設立、信濃町キャンパスでは新病院棟、予防医療センター(仮称)の建設計画が進行中。湘南藤沢キャンパスではレジデンシャル施設型の未来創造塾(仮称)を創設、大学生・留学生・一貫教育校生徒・教員などが起居を共にして学ぶ場として期待される。