2007年02月10日号
『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』 中西輝政著、PHP新書
日本の心を問い直す
現在、最も活発に言論活動を行っている保守派論客の著者は、強い思いを込めて長いタイトルを付けたという。それは、日本文明の核としての「天皇」と「日本のこころ」に集約される。評者がタイトルから連想したのは、サッチャー元首相が教育改革に掲げた「英国人であれば必ず学んでおかなければならないことを教えよ」とのスローガンだ。ケンブリッジ大で文明論を学んだ著者に、似た感覚があるのかもしれない。
日本人が自画像を描けなくなったのは、敗戦後七年間に及ぶ米軍の占領統治によると思われる。当時、民主党政権下の米国には社会主義者が潜在していた。一九九五年に公開された『ヴェノナ文書』によると、次官クラスを含め約三百人ものソ連スパイがいたという。その一部がGHQ(連合国軍総司令部)民政局にもいて、彼らが日本改造を主導した。
その表れが「神道指令」で、日本独自の宗教を否定し、日本文明を改造しようとした。そこには、皇室の伝統と道徳・歴史教育の否定も含まれる。マッカーサーは占領政策をスムーズに進めるため、昭和天皇を退位させなかったが、いずれは皇室が途絶えるよう、天皇の兄弟以外の宮家を廃絶し、皇室財産を国有化した。これが、今の皇室典範改正問題につながる。六十年を経て、その効果が現れてきたのだ。
では、「日本のこころ」とは何か。著者は、今年没後四十年になる鈴木大拙の『日本的霊性』を踏まえ、神仏儒習合の日本的宗教がそれに当たるとする。神道は外来の仏教や儒教を手掛かりに認識されたもので、いわば日本人の生きるかたちだった。
日本文明が特殊なのは、トインビーやハンチントンも指摘しているように、主要文明の中で唯一、一国で一文明を形成していることだ。逆に言えば、日本が滅びると日本文明も滅んでしまう。そこに、文明史家としての著者の危機感がある。(T)【税込七七七円】
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