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2006年08月10日号

理工学部「人間教育講座」 本学OB・星出彰彦氏が講演

星出彰彦氏宇宙飛行士の訓練を紹介

 六月二十三日、日吉キャンパスで、理工学部主催による「人間教育講座」が開催された。同講座は、国際性豊かに活躍し、現代社会の先導者ともいえる人々の体験とその倫理観に触れることによって「社会の中でどう生きるか」を考える、という趣旨で設置されたもの。第三回となる今回は、宇宙飛行士の星出彰彦氏を講師に迎えて行われた。

 星出氏は、本学理工学部機械工学科を卒業後、宇宙開発事業団(NASDA;現宇宙航空研究開発機構(JAXA))に勤務し、H-Ⅱロケットなどの開発・監督業務や宇宙飛行士の技術支援業務に従事。二〇〇一年一月に宇宙飛行士、今年二月にはNASAよりミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者)として認定されている。

 講演の中で星出氏は、簡単な自己紹介の後に、世界の宇宙開発の歴史に触れ、有人宇宙開発においては後進国である日本の体制について言及した。

 また、これまで三十三か国、四百四十三人が宇宙飛行をしてきたという世界の有人宇宙活動の現状に関し、現在運用中の有人プロジェクトとして、国際宇宙ステーション(ISS)、米国のスペースシャトル、ロシアのソユーズ宇宙船、中国の神舟の主に四つがあると紹介した。日本に関しては国際宇宙ステーションの利用運用をターゲットに、スペースシャトルミッションなどで有人宇宙技術を蓄積してきたが、ISS後の次世代有人ミッションとして米国は月、火星有人計画を発表しており、他国も同じ方向を見始めている、と高度化する活動内容についても解説した。

 また、宇宙事業の多様化の例として、「現在、米国の民間企業を中心として独自に宇宙船を開発しているところもある」などと、政府機関のみならず、民間が進出している現状についても語った。

 最後に、不時着時のサバイバル訓練や水中での船外活動訓練など、宇宙飛行士の訓練の流れを映像で紹介し、講演を終えた。

 当日は、宇宙開発関連の職業や宇宙飛行士志望の学生など、理工学部生を中心に多くの参加者が会場を埋め、講演に聞き入った。また、講演後には、一時間弱もの長時間にわたって質疑応答の時間が持たれ、活発な質問が飛び交う熱気に満ちた雰囲気の中、会は幕を閉じた。


「質疑応答」

チームワークがとても重要

質疑応答の様子――大学時代にやって良かったことは。
 理工学部体育会ラグビー部に所属していたのですが、そこで仲間ができたことがとても貴重でした。有人宇宙プログラムはどうしても宇宙飛行士に注目が集まりがちですが、実際は数千人単位の人が支えあってできるもので、そのうち我々がたまたま宇宙に行くことができるというだけのことです。こうした中では、個々が自己の仕事を全うして、チームとして一つのことを成し遂げるチームワークがとても重要になります。宇宙は技術の最先端と言われることが多いですが、チームワークである以上、根底にあるのは人と人とのつながりです。そこをしっかりと、ラグビー部をはじめとする仲間との交流の中で学ぶことができたのが大きかったと思います。

 もう一つは、夏休みにヨーロッパに貧乏旅行をしてみたり、スウェーデンに技術交換留学をしたりと、積極的に色々な経験をしたことを、今でも貴重に思っています。若田さんに付き添ってアメリカに行った時も、ただ与えられた仕事をしていたのではなく、別に自前で飛行機の免許を取りました。それは将来宇宙飛行士の訓練として必要だ、という理由もありましたが、訓練としてなぜ飛行機の訓練が必要になるのか、当時訓練の計画を立てている側であったにも関わらず、その私自身が知らなかったので、実感として掴んでおく必要があったからです。与えられたチャンスにプラスアルファで何かをするのはとても大切だと思います。

専門の能力を他分野へ応用

――宇宙飛行士になるために準備すべきことは。
 まず、色々やりたいことをして、幅広い経験をすることが大切であるとともに、自身の研究についてはどこまでも突詰めてほしいと思います。宇宙飛行士になる人は皆、それぞれの分野でかなりのレベルまで達している人ばかりで、そこで培った能力を他の分野に応用しています。ある分野で一定のレベルに到達しないと、応用はできないので、そこに留意してもらえたらと思います。

――バックグラウンドの異なる他国の人とコミュニケーションを取る際のポイントは。
 まず、お互いに相手を尊重することが非常に大切です。また、個人的には一緒にお酒を飲むことを大切にしています(笑)。同じ釜の飯を食う、とよく言われますが、一緒に「場」を共有するということは非常に重要です。仕事が終わったから「じゃあお先に」というものではなく、アフター5の交流が大切と感じます。

宇宙開発分野 民主導へ期待

――今後、宇宙開発に望む方向性は。
 やはり官主導だけではなく、民が進出してきてほしいと思います。宇宙開発にはどうしても莫大な費用がかかるので、これまでは官が開発の中心になってきていましたが、技術の醸成とコストダウンの進展から、人命のかかる有人飛行に関してはまだ困難はあるものの、無人飛行に関しては民が出てくる余地が出てきたと思います。競争相手が出てくることは大歓迎で、宇宙開発の裾野が広がることを願っています。

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