2006年07月10日号
塾風満帆
「ホスピタル・クラウン」という職業を皆さんはご存知だろうか。病気で入院している子供に笑いを振りまき、笑顔を取り戻す道化師のことである。欧米では二十年も前から始まっていて、現在は数十カ国に広まっている。日本でもようやく関心がもたれ、昨年十一月には「日本ホスピタル・クラウン協会」が設立されるなど、輪の広がりが期待される。
そもそも「クラウン」とは一体何か。日本では一般に「ピエロ」の名称で親しまれ、中世ヨーロッパでは王侯貴族の従者として、ルネッサンス期以降は演劇などの舞台で活躍してきた。赤い鼻やメークなどの「形」の部分が目立ちがちだが、その本質は、「道化師」でその場の雰囲気をガラリとかえる、「価値の転換」を実現するところにある。ここで紹介する「ホスピタル・クラウン」は、日本でも有名なアメリカ人医師パッチ・アダムスがはじめたもので、一緒に遊ぶのみならず、子供らしさを開放するという重要な役割を担い、通常専門的な教育を受けている。
では、この「ホスピタル・クラウン」が最も大切にしていることは何であろうか。それは、パフォーマンスではなく、相手の気持ちに共感し、寄り添うことのできる繊細さ、言葉では表現できない形で人の心に触れること、であるという。彼らは笑いや拍手といった見返りを求めず、今日も「与える」ことに生きがいを見出す。
グローバル化、情報化が進む一方で、お茶の間を賑わすのは社会のゆがんだ側面であることも多い。当たり前の「思いやり」が見失われている今の日本で、その本質の部分に転換を与える使命が「ホスピタル・クラウン」にあるならば、見習うべきものは多いのではないだろうか。
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