2006年07月10日号
塾員インタビュー キッコーマン会長 茂木友三郎氏
リーダーには先見性必要
今回、お話を伺ったのは、キッコーマン会長の茂木友三郎氏。茂木氏は同社の海外事業を大きく推進させ、日本の醤油を世界に紹介した立役者。現在は同社会長を務めるほか、大手企業の社外取締役さらには中央教育審議会の副会長も務める。そんな茂木氏に、学生時代の思い出に始まり、考えるリーダー像や塾生へのメッセージを語ってもらった。
世界を照らす独立自尊
――最初に、慶應義塾での思い出をお聞かせ下さい。
私が学生の頃、全塾自治委員会というのがあり、私はその事務局長を務めていました。事務局長ということもあり、義塾の中にあった事務局室に、毎日出入りしていました。それからもう一つ、文連の慶應ジャーナリズム研究会にも所属し、「慶應ジャーナル」という雑誌を作っていました。三年生のときには、編集長も経験し、慶早戦特集号など年に四、五回ほど出していましたが、座談会を企画したりと、楽しい思い出がたくさんあります。
自治会の活動では、学校との交渉などいろいろなことをしましたが、中でも思い出深いのは野球の慶早戦です。自治会ということで、試合にはチケットなしで入れた代わりに、朝五時に神宮に行って試合の観戦のために並ぶ人の整理を行いました。また、慶早戦の前になると、毎シーズン、自治会の幹部が塾生代表としてすき焼きの肉を日吉の野球部合宿所に持っていくのですが、自治会の事務局長であった自分がその役目を担当したこともあります。当時、六大学野球はものすごい人気で、慶早戦の前になると、日吉の合宿所の前を女子学生が取り巻いていて、その中を通っていったのを覚えています。
それから、ジャーナリズム研究会では、取材ということでいつでも野球の試合を観に行くことができました。神宮球場の一番前にあるカメラマン席に入って写真を撮っていました。メディアをやっていると、慶早戦のような楽しいことがあったり、先輩や先生方に会ってインタビューをすることができたりと、非常に楽しいこと、勉強になることが多かったと思います。また、メディアというのは、影響力があるなと思った出来事がありました。ある時、電車に座っていたら、私の前に立っていた慶應の学生が、私が書いた記事について話しているのです。同年代の学生たちが、自分が書いたニュースを話題にしている光景を見て、メディアのもつ影響力とはすごいものだと感じました。
その他の思い出としては、慶應在学中からアメリカに留学したいと考えていて、そのための英語学習として、毎朝、NHKの英会話の番組を三年生と四年生の二年間、一回も欠かさずに聞き続けました。外に出かけるときでも、ラジオを持って行き、必ず番組を十五分聞いたことが、後で非常に役に立ちました。また、できるだけ留学に役立つ講座をとろうと思いました。例えば三年生のときに、アメリカのノースカロライナ大学から交換教授が来た時はその教授の講座をとりました。自分には留学するという目的があったので、集中して勉強に取り組むことができたのだと思います。
慶應義塾の学生の雰囲気を一番味わうことができたのは、やはり野球の慶早戦です。私が三年生の時に慶應の野球部が優勝しました。慶應にいた四年間で優勝したのは、その時たった一回でしたが、神宮から三田までのちょうちん行列を自治会で企画して、非常に面白かったのを覚えています。
――茂木会長が考えるリーダー像とは。
自分、そして組織の進むべき目標を決め、その目標に向かって組織を束ねるのがリーダーの仕事です。では、目標を持つには何が必要かというと、先を見ること、先見性が必要です。先を見て、自分が何をするべきか、そして組織が何をするべきかをはっきり目標の形で現す。これがリーダーに求められる第一の要件です。
第二の要件は、その目標に向かって組織を束ねる上で、説得力が必要になります。つまり、一緒に仕事をする人たちに、同じ目標に向かっていくよう訴えないといけません。そのためには説得力が必要です。その説得力には、プレゼンテーション能力が含まれます。人に理解させ、説得するには、自分自身がそのことに関してよく勉強し、熟知する必要があります。生半可の理解では人を説得することはできません。
いまは世の中が大きく変わっているので、先見性をもつのは簡単ではありません。
そういう点から、我が慶應義塾出身の小泉総理は、立派なリーダーだと思います。小泉総理は目標がはっきりしています。改革の中心として郵政民営化を打ち出し目標に据えたのです。非常に先見性があったと思います。日本で市場経済化を進めなければいけないという要請があり、政府に代わり民間が力を発揮していく、民間主導の社会を作ることが日本に求められていたのです。小泉総理は、郵政民営化は民間主導の象徴的なものだということで、それを明確な目標として掲げ、それに向かって皆を束ねていきました。昨年の選挙などは実に鮮やかでした。そういう点から見て、小泉総理は非常に優れたリーダーだと思います。
目標に向かって努力を
――キッコーマンとしてのこれからの抱負をお願いします。
食と健康の分野でグローバルに展開する会社にしたい、ということです。それを念頭に事業展開をしています。現在、醤油を百カ国以上で販売していますが、二〇〇五年度の売上の約四分の一が海外です。利益ではほぼ半分が海外となっています。すでに海外のウェートが高いのですが、今後もさらにグローバル展開を進めていきたいと思っています。
醤油は日本の食文化の中心の一つです。いま、世界の人たちが友好関係を築くためには、文化の交流が必要です。文化の中でもっとも生活に密着した文化とは何かというと、それは食べること、食文化です。ですから、食文化の中心の一つである醤油を世界に売るということは、日本の食文化を世界に紹介することになります。私達は世界の人たちが仲良くなるための役にたちたいと考えて仕事をしています。そして、これからもますますグローバルに事業を展開していきたいと思っています。私自身も海外に出張した回数は、二百回を越えています。いまでも年に十回くらい、日数に直すと二ヶ月くらい海外に出張していることになります。
――最後に、塾生にメッセージをお願いします。
できるだけ早く、自分が将来何になりたいのか目標をつくり、それに向かって努力をしてほしいと思います。自分の目標に向かって勉強をしてもらいたい。もちろん、目標というのは、後で変わってもいいのであって、変わったら、またそれを目標にすればいいのです。しかし、最初の取り組み方として、ただ漠然と勉強するのではなく、自分は何になりたいのかをはっきり目標に置き、それに向かって、勉強をしてもらいたいと思います。
【もぎ・ゆうざぶろう】1935年千葉県生まれ。58年本学法学部卒業、61年米国コロンビア大学でMBA(経営学修士)取得。58年キッコーマン入社後、海外事業部長などを経て95年代表取締役社長、2004年代表取締役会長に就任。中央教育審議会副会長、米国ウィスコンシン州名誉大使ほか公職も多数。著書に「醤油がアメリカの食卓にのぼった日」(PHP)などがある。
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