2005年04月10日号
<研究室訪問>理工学部情報工学科 小沢慎治教授に聞く
デジタル処理が開く可能性
人文科学分野に導入 研究資料の蓄積なども
小沢慎治先生の研究室で取り組んでいるのは、デジタル情報処理の研究。静止画・音声・動画像などといったパターンの認識を通して、サッカー中継のシーン解析、ITS(高度交通システム)における車両の検出など、様々な実用的応用への展開を試みている。今回は小沢先生が取り組む数ある研究のうち、静止画認識の研究から、慶應大学「HUMI(HUmanities Media Interface)」プロジェクトにおける画像処理および電子透かし技術の研究を、動画像認識から、視覚障害者のための歩行補助システムを紹介する。
新しい研究の可能性
「HUMI」プロジェクトとは、人文科学研究において、デジタル技術を積極的に導入することにより、新しい研究方法や研究分野を開拓することを目標として一九九六年の春に発足したプロジェクトです。そこでは稀覯書(歴史的価値のある古い書物)のデジタル化によるアーカイヴィング(蓄積)とデーターベース化を進めています。当研究室では、その中の画像処理部分を担当しています。稀覯書は傷みやすいために特殊な撮影条件下で撮影され、そのため歪みなどの不具合が生じます。そこで、画像処理を施すことでそれらを補正する研究を行っています。また劣化画像に対する文字情報の抽出や、デジタル画像化してデーターベース化した際の検索手法などについても研究しています。ここで制作された高精密画像は、インターネットを通じて閲覧することができるようになっています。
電子透かしの犯罪防止効果
一般的な透かしというのは、例えば一万円札における福沢先生の肖像などがイメージされると思います。しかし、電子透かしは通常は目には見えません。画像はコンピューターの内部では0・1のパターンで表現されているのですが、その0・1を、情報に応じて少しだけ変えてしまうのです。人間の目には違いは分かりませんが、ある特定の約束事にしたがって変えているので、プログラムを通すと透かしのように情報が浮き出てくるという仕組みです。そこに著作権情報などを入れることが可能になります。通常、出版物には著作権、肖像権などが存在しますが、美術品やキコウ書などをデジタル化したものにもそういった権利が発生します。デジタル化とネットワークの急速な普及により、デジタルコンテンツの不正複製などの問題がクローズアップされてきていますが、そういった違法コピーの防止策、著作権保護の方法として有効です。
また例えば、パスポート等のIDカードにおいて、本人の写真に識別情報に相当する透かしを入れて発行することで、写真の貼り替え等の犯罪を防止することができるとして期待されています。
視覚障害者支援として
身体に障害を持っている方の積極的な社会進出をより行いやすくするためには、障害を感じさせない環境を構築することが必要となります。当研究室では、画像を用いて視覚障害者が単独歩行を行いやすくするためのシステムを研究しています。あまり知られていないことですが、視覚障害者は行きたい所があれば、そこまでの道筋を暗記しなければならず、しばしば大きな困難を伴います。それゆえ、そういったものを得意とするコンピューターが、視覚障害者にとって最も安全な道筋を選び出し、白線や点字ブロックなどの画像による追従、交差点における進行方向の選択などを行い、イヤホンを通じて本人に指示を出すことで、視覚障害者の歩行を支援することができます。
今は、カ-ナビゲーションに代表されるように、デジタル地図を所有している企業もあるわけですから、そういったところと協力ができれば研究は大きく進むと思います。ただし、現実問題として、道路が現在それほど整備されていないため、実用段階に入るのはもう少し先の話にはなってしまいますが、実用化されれば単独歩行の大きな助けとなるでしょう。
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