2009年08月10日号
8月のシンフォニー -渋谷2002~2003
夢をあきらめない

シンガーソングライターとして活躍する川嶋あいが、まだヒットする前、東京に上京してから、路上ライブに取り組んでいた頃の姿を描いたアニメーション映画である。原作は川嶋あいの手記「最後の言葉」。劇中には川嶋あいの楽曲も多数使用されている。
たった一人の家族である母と「歌手になる」という夢を共有していた「アイ」は、歌手デビューを目指して福岡から単身渋谷の名門高校に入学。しかし地元では数々のコンクールでグランプリを受賞していたアイも、東京では所属事務所も首になってしまった。一時は諦めそうになったものの、母の励ましもあり、アイは「路上ライブを千回やる」と決意する。
そしてある日、渋谷の地下街で歌っていた時に、秋葉社長と運命的な出会いを果たす。アイの美しい歌声、ひたむきさに心を打たれた秋葉社長とその下にいる学生らは、惜しみなくアイを支援するようになるのだった。
そうした支援もあり、路上ライブは徐々に充実。「手売りでのCD販売五千枚」、「渋谷公会堂でのライブ」という目標も掲げ、順調に進んでいるように見えた。しかし、ある時福岡にいる母が病気で倒れてしまう…。
川嶋あいの生い立ちは非常に過酷なものである。実父は出生前に行方不明になり、実母は三歳の時に亡くなった。その後、川嶋家に養女として引き取られるが、養父は十歳の時に、養母は十六歳の時に亡くしている。非常に優しく美しい川嶋あいの歌声には、そうした人生の中で培われた魂が宿っているのだろう。また映画を見ていると、死別してしまった養母との強い絆、共有していた夢が、幾多の困難を乗り越える力になったということがうかがえる。
川嶋あいと苦楽を共にした社長とその学生ら(現・つばさエンタテインメントグループ)の奮闘ぶりも印象に残る。親を亡くした川嶋あいにとって、そのメンバーが家族のような存在であり、大きな心の支えになっていたのは間違いない。
夢をあきらめない大切さや仲間たちの尊さを感じ、さわやかな感動に包まれる作品だ。
【8月22日(土)より、渋谷東急、新宿ミラノほか全国ロードショー】
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