2008年12月10日号
元米国務副長官アーミテージ氏が講演
オバマ次期政権 日米重視は変わらず

「文明論としてのアメリカ研究会」主催シンポジウム「変わるアメリカ、変わらぬアメリカ―大統領選挙後のアメリカ」が十二月五日、三田キャンパス北館ホールで開催された。冒頭、元アメリカ国務副長官のリチャード・アーミテージ氏と、東京大学教授で元特命全権大使・日本政府国連代表部次席代表の北岡伸一氏が基調講演を行い、その後パネルディスカッションが行われた。
アーミテージ氏は「世界における米国の役割」と題して、オバマ次期政権の政策や今後のアメリカの展望、日米関係など世界情勢について語った。
同氏はまず、オバマ次期政権の外交政策は多国間主義を重視し、国連を活用するだろうと指摘。対露政策については、ブッシュ政権が推進したミサイル防衛(MD)施設の東欧配備をスローにすると予測し、オバマ次期大統領は「大国としてのロシアに敬意を払い、耳を傾けるようになるだろう」と述べた。
次に南アジアの問題に触れると、「世界でパキスタン以上に重要な地域はない」と指摘。同国政府が福祉などの国民生活を顧みていないことから「国民が過激派になり得る」と危機感を表し、アフガニスタンでのテロとの戦いが及ぼす影響に懸念を示した。ムンバイ同時多発テロについては、カシミール地方のテログループによるもので、そこにパキスタン政府も関わっている可能性が高いとして、インドとの関係が今後重要になると持論を展開した。
最後に日米関係について述べ、日本ではクリントン政権時に見られた「ジャパンパッシング(日本素通り)」の再現が懸念されているが、「日米同盟を基点としてアジアの安全保障が確固となった。対日政策は今後も続いていく」と断定した。
また、日本はオバマ次期政権に対処する上で、日米同盟や憲法九条の制約など「何ができないか」を考えるよりも、「何ができるかを考え提示してくれれば米国は歓迎する」と日本の今後の姿勢に期待を示した。
その後、北岡氏が「アメリカと国連と日本」と題して講演し、「主要国間の協調は勢力を分割し、お互い立ち入らないようにする」と指摘し、国際安定は価値や原則をいかに共有できるかによると述べた。また、「米国のアジア第一のパートナーは日本」とその期待の高さに触れ、日本は自閉症になるのではなく安全保障理事会にも積極的に入っていくべきとの考えを示した。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
SFCオープンリサーチフォーラム 開催
塾内外の先端技術を展示

SFCオープンリサーチフォーラムが十一月二十一日、二十二日の二日間にかけて、六本木アカデミーヒルズで開催された。当日は、衝突から創造性を発見するという意味の「clash of eXtremes」をテーマに掲げ、塾内外研究者および企業関係者が参加するメインセッションのほか、SFCの百五十を超える先端研究の展示やデモンストレーションが行われた。
初日のオープニングセッションでは、「世界の新しいパワーバランスと日本の安全保障」と題したパネル討議が行われ、自民党の林芳正前防衛大臣、民主党の前原誠司副代表、神谷万丈防衛大学校教授、谷内正太郎外務省顧問の四氏が、世界における日本のあるべき姿について意見を交わした。
その中で谷内氏は、「米国の威信は、今回の金融危機や、イラク、アフガニスタンを巡る外交問題で低下しており、今後の世界はBRICsを含めた相互依存体制に移り変わる」と説明。その上で、「日本は米国とのこれまでの一極集中の外交から、日米欧や日米中といったマルチ外交に切り替えていくことが望ましい」と語った。
前原氏も、日米関係さえ良ければ全て安泰ということはないと述べ、「米国はもとより諸外国との外交を強化することで、米国への依存体制から自立すべき」と指摘。特に、金融危機の影響でドルの是非が問われている基軸通貨では日米の協調は難しいとして、「中長期的にはアジアの共通通貨を検討すべき」と持論を展開した。
会場では、日々の研究活動を凝縮してスーツケースに詰め込み、研究者が会場を動き回って発表するという新しい方法の展示が行われるなど、多くの研究者や企業関係者、塾生、高校生に至るまで、幅広い知の交流が繰り広げられた。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
SDMシンポ開催
インターネット統合研所長 藤原洋氏が講演

日吉リサーチポートフォリオ(HRP)の一貫として、システムデザイン・マネジメント(SDM)研究所開設記念となる第一回シンポジウム「社会との協生をめざした技術システムのデザイン」が十一月十四日、日吉キャンパス協生館の藤原洋記念ホールで開催された。HRPとは、日吉キャンパス全体で展開されている研究活動を、塾内外に広く紹介することを目的としたもの。
基調講演では、インターネット総合研究所所長の藤原洋氏が、「科学技術と企業家の精神-新しい産業革命のために」と題して、講演した。藤原氏は、技術発展の歴史に触れ、「社会発展は、科学技術がもたらす」という独自の歴史観を紹介。また、そこに企業家の役割も大きいことを説明した。
その後、データを紹介しながら、「日本は理系の人材を活用していない」と述べた。そして、今後は環境エネルギーが産業革命の主軸になり、それを日本がリードすることができると主張した。最後は、最新技術である超電導ケーブルの構想に言及して終わった。
続いて、国立天文台名誉教授の海部宣男氏、SDM研究所所長の狼嘉彰氏、同研究科教授の前野隆司氏が加わり、パネルディスカッションが行われた。
会場となった藤原洋記念ホールは、講演者の藤原氏が創立百五十年記念事業資金に高額(二十億円)の寄付をしたことに対して、謝意を示して命名されたもの。藤原氏は、寄付理由について、インターネット技術の日本への導入・普及に果たした本学の貢献に「敬意を払い、支援した」と述べている。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
中村勘三郎と唐沢寿明が本学で対談
創立百五十年塾生スタッフ企画の先導者シリーズ第三弾「対談 中村勘三郎×唐沢寿明~伝え、創り、魅せる。~」が十一月十七日、三田キャンパス西校舎ホールで行われた。中村氏は歌舞伎役者、唐沢氏は俳優として活躍している。
司会は、本学OGのTBSアナウンサー、長岡杏子氏が務めた。対談は、仕事に対する姿勢や海外公演での経験から恋愛観など、幅広い話題で行われた。
新しい歌舞伎を創造していることで知られる中村氏だが、当人は「自分としては古くしていると思う。原点回帰みたいになっている」と語った。役への姿勢について唐沢氏は、「面白いとかつまらないと正直に言うのは、美しいと思う。相手と正直に言い合うことで、お互いを高め合うことができる関係を築きたい」と述べていた。また、恋愛観については、「何かを要求するのではなく、相手のために何かをすることが大切」という意見が出た。
基本は中村氏を中心に話ながら、司会の微妙な間に唐沢氏が突っ込みを入れるなど、終始和やかな雰囲気で、会場は笑いが絶えなかった。
当日は、定員約九百人の会場がいっぱいになり、中継会場が設けられるほどの盛況だった。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
第687回三田演説会 開催
佐高信氏 独自の福澤論を展開
第六百八十七回三田演説会が十一月二十六日、三田キャンパス北館ホールで行われた。今回演壇に立ったのは評論家の佐高信氏で、「平熱の思想家、福澤諭吉」と題して、官に下らず民に徹した福澤の人物像、そしてその精神について語った。
佐高氏は、福澤を平熱の思想家と評し、時代が狂気を帯びるほどその存在感は大きくなり、排斥されるようになると述べ、暗殺されるほどの人物こそ改革者の名にふさわしいと持論を展開した。
また、官尊民卑を象徴するものとして勲章制度を批判し、福澤の門下に学んだ者は勲章をもらうべきではないと主張した。
その一方で、福澤に対する世間の多くの非難にも触れると、福澤も人間であり全知全能の神のように考えるのは間違いだと述べた。そして、重要なのは福澤を今にどう活かすかだとして、慶應義塾は福澤本来の異端の精神を取り戻すべきだと訴えた。
演説後の質疑応答も活発に行われ、佐高氏のユーモアのある語り口に会場は笑いに包まれていた。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
全塾協議会事務局長・事務局次長 選挙
12月8日からスタート


全塾協議会事務局長・事務局次長の選挙が十二月八日から十三日にかけて行われる。今年、立候補したのは、事務局長候補・若月薫君(経三)=写真左、次長候補・齊藤諭君(法・政三)=写真右、の一組のみ。投票権は全学部生にあり、学生証さえあれば各キャンパスで投票できる。
両候補は、公約として「自治会費交付金の増額」「交付金配布状況の透明化」「全塾協議会所属の団体との連携強化」を掲げている。公約の詳細は以下HP(http://www.keio-zenkyo.com/election08)を参照。
全塾協議会とは、本学学部生における最高意思決定機関。毎月、全塾協議会事務局長・事務局次長および上部団体(文化団体連盟、体育会、全塾ゼミナール委員会、全国慶應学生会連盟、四谷自治会、福利厚生機関本部の六団体)の代表者の三分の二によって、会議が開催されている。決議を必要とする場合は、全会一致による決定を採用している。業務として、塾生全員から等しく集めた「学生自治会費(年間七百五十円、総額約二千万円)」の公正な配分を行うなど、本学における自治活動全般に関わる基本方針を決定している。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
日仏4機関と連携
情報学研究の拠点設立
慶應義塾大学は十二月二日、国立情報学研究所で、日仏計五機関による日仏情報学連携研究拠点(JFLI:Japanese-French Laboratory For Informatics)設立の協定を締結した。
今回協定を結んだのは、国立情報学研究所(所長:坂内正夫)、慶應義塾大学(塾長:安西祐一郎)、東京大学(総長:小宮山宏)、フランス国立科学研究センター(会長:カトリーヌ・ブレシニャック)、ピエール&マリー・キュリー大学(学長:ジャン・シャルル・ポムロル)の計五機関。
今年は日仏交流百五十年の年にあたり、情報学分野においてこれまで活発に行われてきた研究交流、成果発信活動をより広く発展させるため、フランス国立科学研究センター側から連携拠点の構築が提案されていた。
今後、研究拠点では、「次世代ネットワーク」、「グリッド及びHPC(High‐Performance Computing)」、「コンピュータ・セキュリティ」、「画像及びマルチメディア」、「量子コンピューティング」の五つの研究課題に取り組み、日仏の情報学研究者間の交流・連携推進、JFLI参加機関間の連携強化、情報学研究の成果発信の場形成、連携に伴う情報学研究の新たなイノベーションの創造などを目指す。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
経済学部講演会 塩川正十郎氏が語る
創立百五十年記念経済学部講演会が十一月二十九日、三田キャンパス北館ホールで行われた。第四回目の今回は、本学塾員で元財務大臣の塩川正十郎氏が講演し、日本の教育、外交、経済について語った。
塩川氏は社会保障制度に関して、現行の年金制度運用には積立金が六百五十億必要なのに対して実際は百五十億しかないと指摘し、政府は財源を税金で埋めるしかない原因を国民にしっかり示して納得を得るべきだと述べた。
また経済については、政府が具体的な経済成長の数値目標を打ち出せば、それに応じて官僚も動き、日本全体が活気を取り戻すようになると述べ、政府側のリーダーシップの必要性を主張した。
講演後の質疑応答で選挙に話題が及ぶと、国民は自分の都合だけで候補を選ぶ便利主義に流されるべきではないと指摘し、選挙民の意識向上を促した。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
大麻譲渡の男子学生に有罪判決
本学塾生による大麻事件で、後輩に大麻を売り渡したとして大麻取締法違反(譲渡)の罪に問われた商学部二年の内田浩太郎被告(21)の判決が十一月八日に行われ、横浜地裁川崎支部は、懲役六月、執行猶予三年、追徴金七千円(求刑・懲役六月、追徴金七千円)の判決を言い渡した。
阿部浩巳裁判官は「最高学府である大学のキャンパス内で大麻の売買が行われたことは、社会に少なからぬ衝撃を与えた」と述べたほか、判決後には「起こしたことの結果については責任を引き受けなければならないが、これから新しい道を歩んで下さい」と諭した。
判決によると、内田被告は七月三日、日吉キャンパス内で、経済学部一年の元男子学生(20、懲役六月・執行猶予三年が確定)に大麻約〇・八四グラムを七千円で譲り渡した。
本学広報室は「判決内容を厳粛に受け止めている。大学全体として、再発防止に向けた取り組みと薬物問題への対応を進めていきたい。内田被告の処分については今後、検討する」としている。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
第13回慶應医学賞 日米の研究者2氏に
第十三回慶應医学賞授賞式が十一月二十一日、信濃町キャンパス北里講堂で行われた。今回は、「哺乳類の成体脳におけるニューロン新生の生理的役割の解明」を発表した米国ソーク研究所教授のFred H. Gage博士と、「制御性T細胞の発見と免疫疾患における意義の解明」を発表した京都大学教授の坂口志文博士の二人が受賞した。
授賞式ではまず、慶應医学賞審査委員長の岡野栄之教授が審査について報告し、続いて安西祐一郎塾長からGage博士と坂口博士にメダルと賞状が授与され、祝辞が述べられた。次に、塩谷立文部科学大臣の祝辞の代読,駐日アメリカ大使館J・トーマス・シーファー大使からも祝辞が述べられた。最後に、Gage博士と坂口博士がそれぞれ、受賞しての喜びや今後の研究活動への決意を語り、式典は終了した。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;
ゴア氏 日吉で講演
環境と科学技術語る
「10年以内の変革が必要」

慶應義塾創立百五十年記念シンポジウム「デジタル情報革命から環境エネルギー革命へ」アル・ゴア氏来日特別講演会が十一月十八日、日吉キャンパス協生館藤原洋記念ホールで開催された。アル・ゴア氏は、前米副大統領を務め、二〇〇七年にはノーベル平和賞を受賞している。シンポでは、ゴア氏による基調講演、質疑応答、研究者によるパネルディスカッションが行われた。本学と藤原地球環境基金が共催。
最初の基調講演ではゴア氏が、「The Democratization of Technology」と題して、環境問題と科学技術について語った。
ゴア氏は、最近、北極の氷が劇的に減少していることを紹介し、歴史的な気候危機を迎えていることを指摘。そして、地球温暖化の専門家である気候変動に関する政府間パネル(IPPC)によれば、気候危機の深刻さについて疑問の余地がないとの結論が出ていることに触れながら、一方で我々が「あたかもまだ劇的な変化が起こってないかのように行動している」と、問題解決の緊急性を訴えた。
またゴア氏は、「多くのエネルギーが無駄になっており、ハイブリッドや超伝導、スマートグリッドなどの技術により、エネルギー資源の再設計が必要」と述べた。また、「インターネットを活用することで、多くの人が連携しながら、即座に対応すべき危機を解決できる」と、インターネットの可能性について言及した。
質疑応答では、コロンビア大学KEIOグローバルスタジオからの中継で、村井純常任理事も参加した。会場からは、学生が「人類が百年後に生きていることは可能か」と質問。ゴア氏は、「人類存続において、核と気候変化が深刻な危機である。気候危機は、結論が出ていて決断の問題。十年以内に大きな変革を起こさないと、後戻りできない分岐点を越えてしまう」と述べた。また、気候危機について、「認識は高まってきているが、緊急課題という意識は高まっていない」として、一人一人の意識変革の必要性について訴えた。
続いて、「環境エネルギー革命」をテーマに、パネルディスカッションが行われた。藤原地球環境基金代表の藤原洋氏を司会に、六人の研究者が、環境とエネルギーに関する最新の研究の発表し、意見を交わした。
当日、会場には約五百人が集まったほか、日吉の別室と湘南藤沢キャンパスで、特別講演会の様子が中継された。
copyright(C)keiocampus newspaper 2004-2006;