2008年10月10日号
学問のすゝめ21東京会場 人間軸に議論を展開
会場ほぼ満席の盛況
シリーズ最終回 のべ1万5千人の来場

創立百五十年記念講演会「学問のすゝめ21」東京会場が九月二十三日、NHKホールで開催された。この講演会は記念事業の一環として、二〇〇七年九月から今年九月まで全国十三カ所で展開され、今回がシリーズ最終回となる。当日は「日本人のアイデンティティー」をテーマにパネルディスカッションが行われ、福澤諭吉が目指していた「人間」そのものを軸においた視点から、日本の現代社会が抱える諸問題や、これからの日本人のあるべき姿について議論を交わした。
冒頭の森征一本学常任理事の挨拶に続き、フリーアナウンサーの宮本隆治氏をコーディネーターに、さまざまな分野で活躍中の五名のパネリスト、茶道上田宗箇流十六代家元の上田宗冏氏、東京大学大学院情報学環教授の坂村健氏、宇宙飛行士の向井千秋氏、キッコーマン株式会社代表取締役会長CEOの茂木友三郎氏、安西祐一郎本学塾長による活発なパネルディスカッションが展開された。
まず、日本人のイメージについての会場アンケートで、「勤勉」、「自己主張をしない」、「和を大切にする」という回答が多かったことへの解釈で、安西塾長は「自己主張だけすればいいわけではなく、知識、教養、経験を積んだ上で周りの人のことも考え、その上で自分の意見を言うことが大切であり、それが福澤先生の言う独立心」と語った。
次に、世界は日本人に何を求めているかという議題では、坂本氏が「一つのことを突き詰めて特化させる点で日本人は世界に評価されているが、今のようにネットによってどんどん変わる時代では、変化に適応させることが求められる。その点で、日本人は無理にリーダーになろうとする必要なはい」と持論を述べた。
また、これからの日本と若者に期待することでは、茂木氏は「日本からいくつかの分野でグローバルスタンダードを発してほしい」と述べ、環境問題、食糧問題でリーダーシップを取ってほしいと訴えた。向井氏は、夢を持つことの大切さに触れ、「自分がやりたい、と思うことは全て明日に向かっての夢になる。その実現のためには、独立自尊の精神を持って、自分らしく生きること、自分を好きになること、相手を好きになること、そして周りの人と一緒に夢を実現していくがその一歩」と力強く語った。
そして最後に安西塾長は、“独立と協生”について触れ、「若者には世界のどこに行っても自分の考えを語り、自分で責任を持って行動する独立心と、個人、国家、文化間の利害得失、軋轢を超えて力を合わせて生きる協力心をリードしてほしい。そして、夢を持って世界に出て行き、日本人のアイデンティティーになってもらいたい」と期待を寄せた。
会場はほぼ満席の二千七百人で埋め尽くされ、シリーズでは約1万5千人の来場となった。白熱したパネルディスカッションに、ホールは笑いや拍手に包まれていた。
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創立150年記念切手が発行
創立100年記念以来の2回目
創立百五十年を記念して、十一月七日に郵便事業株式会社より、特殊切手「慶應義塾創立百五十年記念切手」および「慶應義塾創立百五十年記念切手帳」が発行される。本学を題材とした切手としては、一九五八年十一月八日に発行された特殊切手「創立百年記念」以来二回目の名誉となる。
切手のデザインには、福澤諭吉肖像写真、慶應義塾エンブレム、三田キャンパス図書館旧館、早慶戦(野球とラグビー)、図書館旧館内の大ステンドグラスの五つが採用された。切手帳は、特殊切手一シートを収めた三つ折りのハードカバー製のもので、慶應義塾の歴史などの解説帳と、切手デザインを基にした大型ポストカードを同梱している。
販売場所は、全国の郵便局および郵便事業株式会社支店で、通信販売も行う。詳しくは、ゆうびんホームページを参照。
なお、都内では今月一日から来年三月三十一日までの期間、慶應義塾のペンマークをデザインした都営バスが創立百五十年を記念して運行している。
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日韓ミレニアムフォーラム
本学を会場に開催
共同コミュニケも発表

第七回日韓ミレニアムフォーラムが十月一日、三田キャンパス北館ホールで行われた。このフォーラムは、二〇〇二年に早稲田大学と高麗大学の共催で始まり、その翌年から本学と延世大学が参加し、以降四大学によって毎年開催されている。
今回のテーマは「二十一世紀における知識と大学の役割」で、各大学の総長・学長による全体会合や、経済、外交安保、文化社会などに関する分科会のほか、今後の日韓の大学連携の方向性を示す各学長による共同コミュニケの発表も行われた。
プログラムは、安西祐一郎塾長の挨拶に続き、「知識と大学の役割:過去、現在、未来」と題した各大学の総長・学長による会合で始まった。まず、総長・学長から各大学の教育・研究の取組みが発表され、その後、内閣府総合化学技術会議議員の薬師寺泰蔵氏を司会としてパネルディスカッションが行われた。
その中で安西塾長は大学の使命について触れ、「大学というのは国の中にあるわけで、国家、そして国民から離れることはできない。また、グローバル化が進む今では、世界と離れることはできない。大学は、これからの世界の方向をいち早くつかんで、それをビジョンに掲げて国家、時代をリードしていく使命を持っている」と語った。
その後、セッション2では「マスメディア」、「民主主義」、セッション3では「金融と貿易」、「エネルギーと環境」をテーマに、各大学の専門家を交えたディスカッションがそれぞれ行われた。
なお、セッション1後には、四大学の総長・学長による共同コミュニケの発表会見が開かれた。共同声明文には、四大学が引き続き知識の伝承と創造における役割を力強く果たし続けること、四大学間の教育・研究交流を一層充実させることで日韓関係の発展に精力的に取り組むこと、未来志向の日韓関係を築くために未来を担う若い世代を的確に導くことへの決意が表明されている。
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新司法試験 本学合格者は165人
大学別では順位下げて3位

法務省の司法試験委員会は九月十一日、法科大学院の修了者を対象にした新司法試験の最終合格者を発表した。六千二百六十一人(うち途中欠席二十三人)が受験し、合格者は二千六十五人で、合格率は三三・〇%。うち本学の受験者数は二百九十二人で合格者は百六十五人、合格率は五六・五%だった。大学別では、合格者数は昨年から一つ順位を下げて三位、合格率は一つ順位を上げて一橋大に次ぐ二位となった。昨年度の合格者数百七十三人、合格率六三・八%に比べて若干下回った。
新司法試験になって三回目の今年は、七十四校すべての法科大学院が参加し、受験者数は昨年より三六%増加した。しかし、合格者数は目安とされていた二一〇〇~二五〇〇人程度を下回り、合格率も一昨年の四八%、昨年の四〇%に比べて下落傾向にある。さらに今回は、愛知学院大、信州大、姫路独協大の三校で合格者がゼロ、一けた台の大学も三十一校あり、大学院側が学生の質を維持できていない実情が浮き彫りになった。
合格者増がこのペースでは、あと二年で目標の年間3千人に到達するのは難しい。法科大学院修了生には五年間で三回しか司法試験を受験できない制限があり、今年不合格となって受験資格を失った人は二百四十一人に上った。
法学部などを卒業した既修者コース(二年制)と、法学部以外の学部出身者や社会人経験者などを対象とした未修者コース(三年制)との間にも合格率の差が見られた。本学では、既修者の合格者数は百三十五人、未修者で三十人が合格し、合格率はそれぞれ、六四・〇%、三七・〇%となり、特に未修者コースは昨年と比べて二三・三ポイントの大幅な下落が見られた。
出身大学院別の合格者数は、東大がトップで、中大、本学、早大、京大と続いた。
なお、今年の合格者の平均年齢は二十九・〇歳で、最高は五十九歳。男女別では男性が千五百一人、女性が五百六十四人。
旧司法試験も二〇一〇年までは新試験と並行して行われ、今年は十一月に二百人程度の合格者が発表される見込み。
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本学でCOEシンポ開催
英語教育のあり方議論

慶應義塾大学英語教育シンポジウム「英語教育の新時代―『英語が使える日本人の育成のための戦略構想』を超えて―」が九月十五日、三田キャンパス西校舎ホールで行われた。このシンポジウムは、文部科学省が策定した、英語教育に関する「戦略構想」と「行動計画」を見直し、教育におけることばの問題を根源的な部分から検討しようというもの。
第一部では、大津由紀雄本学教授と津田幸男筑波大教授、山田雄一郎広島修道大教授の三人が講演を行った。本シンポジウム主催者の大津教授は、戦略構想の考えとその評価について整理し、戦略構想は学校教育のあり方を偏に英語運用能力への社会的要請という観点だけから規定していると指摘。英検、TOEIC、TOEFL等の「数値目標」の重要性は十分な検討がされておらず、数値目標の達成だけが目的化している危機的状況があると訴えた。
また、そうした英語志向教育によって「ことばを使える日本人」の育成が危うくなりつつあり、母語を主な手段としてことばの気づきを育成する言語教育が不可欠と強調し、テープを用いて英語教材における英語と国語を有機的に連携させる方法を提言した。
第二部では、「英語教育政策の未来」と題したパネルディスカッションが行われた。その中で江利川春雄和歌山大教授は、現在の教育政策の基本綱領が、日本経団連が出した「グローバル化時代の人材育成について」に基づいていることに着目。財界人たちが自民党などの政策実施状況を五段階評価し、それをもとに政治献金を配分することで、大企業本位の政策誘導をしていると批判した。また、その代案として、生徒が生徒に教えあう協同学習を紹介し、学びの共同体創りを提案した。
会場には、学校教師など教育関係者ら五百四十名をこえる聴衆がつめかけ、今後の英語教育のあり方を学んだ。
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大学院政策・メディア研究科に新コース設置
低炭素社会の実現目指す
本学大学院政策・メディア研究科修士課程に、「社会イノベータ育成コース」と「低炭素社会デザインコース」の二つが新しく設置され、来年四月に開講する。
「社会イノベータ育成コース」は、現代社会において求められる人間の心身共の健康や低炭素社会への移行という個益と、社会全体の生産性向上や地域社会の活性化という公益をともに追求可能な社会に対応する、行政でもビジネスでも非営利団体でも必要とされる事業センスと公益センスを兼ね備えた人材の育成を目指す。
本コースでは、社会起業の発想、炭素排出権取引のメカニズム、情報社会における地域社会再生の手段などについて理論学習と現場における実践経験を行う。対象は、さまざまな分野の学部出身者と社会人・社会人経験者などで、本コースの修了者には修士号とともに、「社会イノベータ」サーティフィケートが授与される。
「低炭素社会実現コース」は、持続可能な社会に移行する上で、極めて重要な課題である低炭素社会の構築に向けて、事業の企画・開発や炭素削減クレジットの市場流通拡大などに応えうる専門知識や実践的な問題発見・解決能力を備えた人材の育成を目的とする。
本コースでは、本学教授のほかに、炭素クレジット市場をリードする民間企業、NPOや研究機関の実務者が、特別研究職員として行う多彩な講義・演習・フィールドワークを予定している。
募集人数は三十人程度で、対象は学生、社会人、留学生。社会人の場合は、一年の通学および修士論文作成により修士号の取得が可能になる。
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大学院教育支援プログラム 本学から3件
文部科学省の平成二十年度「大学院教育改革支援プログラム」に本学から三件の取組(うち東京大学との共同取組一件)が採択された。
このプログラムは、「新時代の大学院教育」、「大学院教育振興施策要綱」などを踏まえ、社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する大学院博士課程、修士課程を対象に、優れた組織的・体系的な教育への取組に対して重点的な財政的支援を行うことで、大学院教育の実質化を推進することを目的としたもの。今年度は、百六十一大学から二百七十三件の申請があり、四十七大学六十六件が選ばれた。
今回、本学から採択された取組は以下の通り。
▽取組名:社会イノベータ育成コースの創設
取組研究科・専攻:政策・メディア研究科政策・メディア専攻
代表者:金子郁容教授
▽取組名:創薬に向けた医薬科学を先導する人材の養成
取組研究科・専攻:医学研究科医科学専攻、薬学研究科薬学専攻・医療薬学専攻、政策・メディア研究科政策・メディア専攻
代表者:河上裕教授
▽取組名:大学連携によるICTリーダーシップ教育(東京大学との共同取組)
取組研究科・専攻:政策・メディア研究科政策・メディア専攻、東京大学
代表者:東京大学
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本学と仏大学のMBA 同時取得が可能に
ダブルディグリー制度を導入
本学大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)とフランスのESSEC Business School(エセックビジネススクール)がダブル・ディグリー制度に関する協定を締結し、九月五日にパリで調印式が行われた。
ダブル・ディグリー制度とは、学生が日本とフランス双方の大学で修了用件を満たすことで、両大学の学位(修士)を取得することが可能になる制度のこと。
今回の協定で双方のカリキュラムが融合し、通常のMBAと同じ二年間で、慶應義塾とエセック両大学のMBAを取得できるようになる。
対象となるのは、両大学のMBA課程一年生の成績優秀者。慶應ビジネススクールとエセックそれぞれから最大三人が選抜される。二年次に相手校のMBA課程で一年間学び、両校の修了の要件を修めた学生に、二年間で両校から正規のMBA学位が授与される。
なお、プログラムの候補者には、正規科目のMBAカリキュラムに加え、語学力や異文化対応力など多くの素養が求められるため、国際感覚と共に広い視野と専門知識を併せ持つMBA取得者の育成が促進される。
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第13回慶應医学賞が決定
第十三回慶應医学賞の受賞者の発表が十月二日にあり、十三回目となる今回は、京都大学教授の坂口志文博士と、米国ソーク研究所のフレッド・H・ゲージ博士の二人が選ばれた。同賞は、医学や生命科学分野で優れた業績を上げた研究者に贈られるもので、過去には本賞受賞者からノーベル生理学・医学賞受賞を二人輩出している。受賞者には賞金二千万円とメダルが贈呈される。
坂口教授は、免疫系が自分自身の体を攻撃するのを抑制する「制御性T細胞」を発見、機能を解明した。ゲージ教授は、これまで再生しないと考えられていた哺乳類の脳の特定部位で、生涯にわたって神経細胞が新たに生み出されていることを発見した。
なお、授賞式および受賞記念講演会が十一月二十一日に、受賞記念シンポジウムが翌二十二日に、ともに医学部信濃町キャンパスにおいて開催される。受賞記念講演会は一般者を対象に、シンポジウムは研究者・学生を対象に行われる予定。
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九月入学式・卒業式を挙行
平成二十年度九月入学式が九月二十二日、三田キャンパス北館ホールで学部・大学院合同で行われた。
今年度九月の入学者数は、学部では、法学部二人、総合政策学部二十一人、環境情報学部二十二人の計四十五人。大学院修士課程は、理工学研究科三十人、政策・メディア研究科三十三人、システムデザイン・マネジメント研究科十四人、メディアデザイン研究科十二人の計八十九人。同後期博士課程は、理工学研究科三十人、政策・メディア研究科七人、システムデザイン・マネジメント研究科五人、メディアデザイン研究科一人の計四十三人だった。
また、大学九月卒業式と大学院学位授与式が九月十九日、ともに三田キャンパス西校舎ホールで行われた。
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港区と連携協定
慶應義塾と港区が連携協力に関する基本協定を結び、十月四日に港区にある協働事業拠点「芝の家」で締結式が行われた。今回の協定で、本学と港区の双方が有する資源を活用することで、将来にわたって連携・協力を推進し、地域社会および教育・研究の発展に役立てることに合意した。
本学と港区の間では、これまでも港区民講座やアートマネジメント講座のほか、今回の協定を結ぶ契機となった、昭和三十年代のあたたかい人と人とのつながりの再生を目的とした「昭和地域力再発見事業」など様々な連携が行われている。
当日には、この事業の拠点である「芝の家」のオープニングイベントも開かれ、昭和の写真展示や、けん玉、紙芝居などの昔遊びのイベントが行われた。
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日中韓3大学で共同プログラム
創立百五十年記念未来先導基金プログラム「延世大学・香港大学・慶應義塾 三大学合同東アジア研究プログラム」が本学でスタートし、九月二十五日に三田キャンパスでオープニングセレモニーが開催された。このプログラムは、三大学から選抜された学生十六人が一年をかけて共に三大学を巡り、共通の講義を受講し、大学寮での共同生活を通して、東アジア地域に関する深い理解を深めようというもの。
本学からは四人の学生が参加し、各国のコア科目に加えて、東アジア地域の歴史、文化、経済、政治、国際関係などに関する選択科目を履修する。グローバル社会で活躍する人材の輩出を目指す。
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「未来をひらく福澤諭吉展」記者発表会
国立博物館で福澤展
塾員の佐高氏が特別講演

慶應義塾創立百五十年記念「未来をひらく福澤諭吉展」の記者発表会が九月十日、三田キャンパス三田演説館で行われた。本展覧会は本学の創立百五十年を記念して、東京国立博物館、慶應義塾、フジサンケイグループの主催により、二〇〇九年一月十日から三月八日まで、東京国立博物館表慶館で開催され、その後、福岡、大阪と巡回する。当日は、主催者挨拶や展覧会概要説明、特別講演が行われた。
まず、東京国立博物館館長の佐藤禎一氏が壇上に上り、「本展覧会は優れた美術品や慶應義塾に縁の名品が一堂に会する非常に貴重な機会になる。芸術が社会に果たす役割を説いた福澤諭吉の精神の結集をご覧いただけると思う」と挨拶。続いて安西祐一郎塾長が、「福澤諭吉の思想は現代の日本と世界の課題意識に通底するものがある。新しい時代を見通して行動する理念と勇気を、この展覧会は十分に与えてくれる」と述べ、開催への喜びを表した。産経新聞社会長の清原武彦氏も挨拶を行った。
その後、本学アート・センター所長の前田富士夫氏から展覧会概要説明があり、展示作品の紹介が行われた。次に本学福澤研究センター准教授の西澤直子氏が、義塾が新しく取得した山口良蔵宛の福澤諭吉の書簡について説明。この書簡は、今回の展覧会で初めて一般へ実物公開される。
式の最後には、評論家で塾員の佐高信氏が特別講演を行い、福澤諭吉像について批評を述べた。佐高氏はまず、福澤は平熱の思想家であり、時代が歪んで状況がおかしくなったときに平静を保てる人物と評した。また、状況に応じて論を展開するプラグマティストであり、福澤を読むには、書いたことや言ったことを追うのではなく、実際にどう行動し、人々にどう影響を与えたかを捉える必要があると、脱亜論を例に挙げて指摘。福澤門下生の中に生きている福澤の伝統と精神こそ福澤精神であり、それをどう受け継いでいくかが重要と述べた。
さらに、民の自立なくして民主主義はありえない、と言った福澤の官に対する対抗心、民を貫く精神は今の時代にも求められるものであり、政治に頼らない自立した実業の道を展開することこそ、福澤精神を受け継ぎ、絶やさないことになると語った。
本展覧会には、福澤諭吉の遺品、遺墨、書簡、自筆草稿、著書、および福澤門下生が収集した美術コレクションや慶應義塾縁の名品が展示される。そこに見られる「異端」と「先導」の精神、福澤の多方面にわたる活動を捉え直し、現代社会において自らの進むべき道を考えることが開催の趣旨。なお、今回が福澤諭吉に関する国内最初の本格的で大規模な歴史展となり、東京での展覧が終わると、福岡と大阪で巡回が行われる。
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